久しぶりに、故郷の駅へ降りました。
今日は、墓じまいの打ち合わせです。
石材店とは墓地で待ち合わせ。
墓守の方には、
「駅まで迎えに行きますよ。」
と言っていただきました。
改札を出て辺りを見回していると、
一人の男性が近づいてきました。
「○○さんですか?」
「はい。」
男性は少し笑って、
「お疲れ様です。」
と頭を下げました。
「墓守の○○です。」
「ああ、今日はすみません。」
「いやいや。行きましょう。」
初めて会ったはずなのに、
妙に親しげな人でした。
車で墓地へ向かいます。
「遠いところ、大変だったでしょう。」
「なかなか来られなくて。」
「そりゃそうですよ。」
墓守は、よくしゃべる人でした。
「墓守いうても、
ほとんどボランティアみたいなもんですよ。」
「そうなんですか。」
「まあ、管理料はありがたいですけどね。」
そこは、ちゃんと言うんだ。
「ただね、
誰も来なくなったお墓は困るんですよ。
草は伸びるし、
連絡もつかんようになる。」
「そうですよね。」
「だから、
こうして連絡いただけるだけでも
ありがたいですよ。」
どうも、
歓迎されているようでした。
墓地へ着くと、
石材店の方も来ていました。
墓守は、
ここでもやたら元気です。
「車はこっちから入れますよ。」
「ユニックは?」
「ここなら据えられる。」
そして、
「この辺、草も刈っときましたから。」
「あ、ありがとうございます。」
石材店の方より、
墓守の方がよくしゃべります。
なんで、
こんなに張り切ってるんだろう。
ふと、
石材店の方を見ました。
……知り合いなのか?
一通り確認が終わると、
墓守が聞きました。
「お骨は、どうされるんです?」
「自宅の近くに、
樹木葬を見つけたので、
そちらへ移そうと思っています。」
「ああ、樹木葬。」
大きくうなずきました。
「あれは便利なもんですよ。」
「そうですか。」
「近くにあるなら、なおいい。」
墓守は、
墓を見ながら続けました。
「供養いうもんはね、
生きてる方にもいいもんですよ。」
「はあ。」
「手ぇ合わせると、
こころが洗われる。」
少し笑って、
「そんな感じが、いつもしちょるですよ。」
「……そうですか。」
打ち合わせが終わりました。
石材店の方が帰ったあと、
墓守と二人で墓の前に残りました。
「じゃあ、
工事の日も来ますから。」
「いや、
そこまでしていただかなくても。」
「来ますよ。」
やっぱり、
妙に張り切っています。
墓守は墓石を見ながら、
ふと言いました。
「あなたのお父さんのことも、
よう知っちょるですよ。」
「父を?」
「ええ。」
少し懐かしそうな顔をしました。
「私が子どものころ、
よう柿の木につるされました。」
「……父に?」
「そうそう。」
墓守は笑っています。

「悪さしたら、
怖かったですからねえ。」
「そんなことする人だったんですか。」
「しましたよ。」
初めて聞く話でした。
墓守は少し考えて、
「まあ、
お父さんとの思い出いうたら、
それぐらいしかありませんけど。」
「柿の木ですか。」
「柿の木です。」
二人で笑いました。
帰り際、
墓守が思い出したように言いました。
「そうそう。」
「はい?」
「駅で見たとき、
親父さんによう似とったからね。」
「そうですか。」
墓守は笑いました。
「声かけるの、
ちょっと怖かったですよ。」
「私、何もしてないですよ。」
「そりゃそうですけど。」
おわり
