ohakajimaijp– Author –
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お墓じまい後の物語
【その五十】踊る
私は学校を出て、銀行に勤めました。 真面目だけが取り柄で、 定年を迎え、送別会もしてもらいましたが、 マイクを回されても、当然、歌うことなどはなく、 私の銀行員生活は、あっけなく幕を閉じました。 その翌日からしばらくは、 手続きや用事に追われ... -
お墓じまい後の物語
【その四十九】雪がとけたら
窓の外は、一面の雪でした。 道路の脇には、 除雪された雪が、人の背丈ほど積み上がっています。 そんな日のことです。 町役場の顔なじみのおばさんから、電話がありました。 「ちょっと頼める?」 「なんや。」 「お墓なんだけど。」 「墓?」 「町を出た... -
お墓じまい後の物語
【その四十八】指切りげんまん
見上げると、 大きな木の枝が、ゆっくり揺れていました。 葉の間から、やわらかな光が落ちています。 おばあちゃんは、 しばらく木を眺めていました。 「……いいじゃない。」 娘が、 「お父さん、気に入るかな。」 と聞きます。 「気に入るわよ。」 おばあ... -
お墓じまい後の物語
【その四十七】もう一回だけ
墓へ向かう車の中で、父は言いました。 「別に、来んでもよかったとぞ。」「休みなんて、そうそう、とれんやろうが」 運転している息子が、 「父さんが今度、墓行くって言うけん。」 「電話で、つい言うただけたい。」 「もう来たんやから、よかろうもん。... -
お墓じまい後の物語
【その四十六】順番
母が亡くなって、十年になります。 母は、元気なころから、何でも自分で決める人でした。 身だしなみにもうるさく、 「ちょっとそこまでだから。」 と言って出かけようとすると、 「ちょっとそこまでにも、人はいるでしょ。」 なんて言う人でした。 大きな... -
お墓じまい後の物語
【その四十五】墓守さん
久しぶりに、故郷の駅へ降りました。 今日は、墓じまいの打ち合わせです。 石材店とは墓地で待ち合わせ。 墓守の方には、 「駅まで迎えに行きますよ。」 と言っていただきました。 改札を出て辺りを見回していると、 一人の男性が近づいてきました。 「○○... -
お墓じまい後の物語
【その四十四】スーパーの売り場から
「店長。」 バックヤードでパソコンを見ていた店長が、顔を上げました。 「なに?」 「新しく出たカップ麺、かなり売れてますよ。」 「そうなの?」 「そうなのって。店長でしょ。」 「まだ数字には出てないんだよ。」 「売場には出てます。」 店長は黙り... -
お墓じまい後の物語
【その四十三】エゴの木
ホームセンターの園芸売り場で、パートをしています。 オーバーオールの上から、店のエプロン。 もう何年も、この格好です。 「すみません。これ、日陰でも大丈夫ですか?」 「半日陰なら大丈夫ですよ。でも、西日はちょっと避けた方がいいかな。」 「こっ... -
お墓じまい後の物語
【その四十二】ガトーショコラ
夫が亡くなってから、一人で暮らしていました。 長く住んだ田舎の家です。 朝になればお茶を淹れ、洗濯をして、 買い物へ行けば、知っている顔に会いました。 けれど、 夫が亡くなってから、息子は何度も言いました。 「母さん、こっち来ない?」 「まだ大... -
お墓じまい後の物語
【その四十一】いつもの席
父が亡くなって、四年が経ちました。 田舎へ帰るのは、三回忌以来です。 ある日の夜、母から電話がありました。 「お墓ね、しまおうと思ってる。」 「墓じまい?」 「うん。」 少し考えて、 「まあ、その方がいいかもな。」 と答えました。 私は東京に家を...
