おじいちゃんは、今日も食卓にいます。
お父さんの墓じまいを終えたあと、私たちはご遺骨を丁寧に粉骨し、小さな手元供養として自宅に迎えることにしました。
サイドボードの上には、小さなガラスの瓶。
特別な祭壇ではありません。
家族が毎日目にする、いつもの場所です。
ある日、幼稚園に通う息子が、その小瓶を指さして聞きました。
「これがおじいちゃん?」
私は冗談半分で、
「夜になると、その粉から、おじいちゃんがもくもくと出てくるぞ。」
そう言うと、
「ぎゃーっ!」
と耳をふさぎながら、家じゅうを逃げ回ります。
それを見ていた妻からは、
「そんな縁起の悪いこと言わないの。」
と笑いながら叱られてしまいました。

そんな賑やかな夕食も終わり、息子は遊び疲れたのか、いつもより早く眠りにつきました。
私も一息つこうと、ふとサイドボードへ目を向けます。
すると、小さな瓶の横には、お父さんがこの家へ来るたびに必ず使っていた熱燗のおちょこが、そっと置かれていました。
誰が置いたのかは分かりません。
でも、そのおちょこを見た瞬間、頭の中に、お父さんが笑いながら座っている姿が浮かびました。
私は静かに席を立ち、眠っている息子の顔を見に行きました。
きっと今日の出来事も、いつか大人になった息子の思い出になるのでしょう。
お墓はなくなりました。
でも、おじいちゃんは今日も、この家の食卓にいます。
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