花は、ただ咲く。
はじめは、正直なところ深く考えていませんでした。
派手な遊びも苦手。
流行を追いかけることもありません。
若い頃は、本ばかり読んでいました。
文学も。
漫画も。
小説も。
面白そうだと思えば、何でも手に取りました。
就職は事務員。
結婚もしませんでした。
両親は私がまだ若いうちに旅立ち、
母の妹に助けてもらいながら、
永代供養墓を選びました。
それから何十年。
私は私なりに、
のんびりと人生を歩いてきました。
今でも、
本を読む時間が一番好きです。
そんな私には、
ずっと好きな言葉があります。
「花は、ただ咲く。」
誰かに見てもらうためでもなく、
理由を探すわけでもなく、
ただ、その時が来たから咲く。
そんな花の姿に、
私は何度も励まれてきました。
年齢を重ねるにつれ、
終活という言葉も耳にするようになりました。
私は少し照れながら、
「ばば活」と呼んでいます。
財産のこと。
住まいのこと。
残る荷物のこと。
ひと通り整理がついた頃、
久しぶりに永代供養墓を訪ねました。
そこで、ふと思ったのです。
私は身寄りがありません。
この場所は、
本当に私の最後の場所として、
私らしいのだろうか。
そんな時、
墓じまいコンシェルジュの方へ相談しました。
いろいろなお話を聞く中で、
樹木葬という供養を知りました。
「一度、ご覧になってみませんか。」
そう勧められ、
見学へ行くことにしました。
丘を登り、
樹木の前へ立った、その瞬間でした。
春一番でしょうか。
やさしい風が、
私の髪をそっとなでていきました。
見下ろす斜面には、
一面の花が咲いていました。
風に揺れながら、
何も語らず、
ただ静かに咲いていました。
私はその景色を見ながら、
自然と笑っていました。
「ああ……
ここで眠ろう。」
そう思いました。

誰かに決めてもらったのではありません。
誰かに勧められたわけでもありません。
私自身が、
私の人生の終わりを選んだのです。
帰り道、
春風に揺れる花をもう一度振り返りました。
花は、ただ咲く。
そして人もまた、
自分らしく生きた人生を、
静かに咲き終えれば、それでいい。
私は今、
そんなふうに思っています。
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