【その一】 おじいちゃんは、今日も食卓にいます。

おじいちゃんは、今日も食卓にいます。

お父さんの墓じまいを終えたあと、私たちはご遺骨を丁寧に粉骨し、小さな手元供養として自宅に迎えることにしました。

サイドボードの上には、小さなガラスの瓶。

特別な祭壇ではありません。

家族が毎日目にする、いつもの場所です。

ある日、幼稚園に通う息子が、その小瓶を指さして聞きました。

「これがおじいちゃん?」

私は冗談半分で、

「夜になると、その粉から、おじいちゃんがもくもくと出てくるぞ。」

そう言うと、

「ぎゃーっ!」

と耳をふさぎながら、家じゅうを逃げ回ります。

それを見ていた妻からは、

「そんな縁起の悪いこと言わないの。」

と笑いながら叱られてしまいました。

そんな賑やかな夕食も終わり、息子は遊び疲れたのか、いつもより早く眠りにつきました。

私も一息つこうと、ふとサイドボードへ目を向けます。

すると、小さな瓶の横には、お父さんがこの家へ来るたびに必ず使っていた熱燗のおちょこが、そっと置かれていました。

誰が置いたのかは分かりません。

でも、そのおちょこを見た瞬間、頭の中に、お父さんが笑いながら座っている姿が浮かびました。

私は静かに席を立ち、眠っている息子の顔を見に行きました。

きっと今日の出来事も、いつか大人になった息子の思い出になるのでしょう。

お墓はなくなりました。

でも、おじいちゃんは今日も、この家の食卓にいます。

ご家族の供養物語を読んでみる方は

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この物語は、「お墓じまい後の物語」のオリジナル作品です。

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