【その十七】花は、ただ咲く。

花は、ただ咲く。

はじめは、正直なところ深く考えていませんでした。

派手な遊びも苦手。

流行を追いかけることもありません。

若い頃は、本ばかり読んでいました。

文学も。

漫画も。

小説も。

面白そうだと思えば、何でも手に取りました。

就職は事務員。

結婚もしませんでした。

両親は私がまだ若いうちに旅立ち、

母の妹に助けてもらいながら、

永代供養墓を選びました。

それから何十年。

私は私なりに、

のんびりと人生を歩いてきました。

今でも、

本を読む時間が一番好きです。

そんな私には、

ずっと好きな言葉があります。

「花は、ただ咲く。」

誰かに見てもらうためでもなく、

理由を探すわけでもなく、

ただ、その時が来たから咲く。

そんな花の姿に、

私は何度も励まれてきました。

年齢を重ねるにつれ、

終活という言葉も耳にするようになりました。

私は少し照れながら、

「ばば活」と呼んでいます。

財産のこと。

住まいのこと。

残る荷物のこと。

ひと通り整理がついた頃、

久しぶりに永代供養墓を訪ねました。

そこで、ふと思ったのです。

私は身寄りがありません。

この場所は、

本当に私の最後の場所として、

私らしいのだろうか。

そんな時、

墓じまいコンシェルジュの方へ相談しました。

いろいろなお話を聞く中で、

樹木葬という供養を知りました。

「一度、ご覧になってみませんか。」

そう勧められ、

見学へ行くことにしました。

丘を登り、

樹木の前へ立った、その瞬間でした。

春一番でしょうか。

やさしい風が、

私の髪をそっとなでていきました。

見下ろす斜面には、

一面の花が咲いていました。

風に揺れながら、

何も語らず、

ただ静かに咲いていました。

私はその景色を見ながら、

自然と笑っていました。

「ああ……

ここで眠ろう。」

そう思いました。

誰かに決めてもらったのではありません。

誰かに勧められたわけでもありません。

私自身が、

私の人生の終わりを選んだのです。

帰り道、

春風に揺れる花をもう一度振り返りました。

花は、ただ咲く。

そして人もまた、

自分らしく生きた人生を、

静かに咲き終えれば、それでいい。

私は今、

そんなふうに思っています。

ご家族の供養物語を読んでみる方は

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この物語は、「お墓じまい後の物語」のオリジナル作品です。

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