東京から青森へ帰るのが、
毎年の夏休みでした。
じいちゃんは、一人暮らし。
私たちが来ると、
「うるさくなったな。」
そう言いながら、
少し嬉しそうでした。
ここ二、三年、
ねぶたは、
じいちゃんと二人で行きました。
その前に寄るのが、
じいちゃんの行きつけの店。
「東京から来た孫だ。」
聞かれてもいないのに、
じいちゃんは私を紹介します。
少し恥ずかしかったけれど、
知らない大人たちの中にいるのが、
私は好きでした。
母には内緒です。
祭りの帰り。
人がまばらになった道を、
二人で歩きました。
「あった。」
鈴です。
「こっちにもあるぞ。」
鈴を探しながら帰るのも、
いつの間にか恒例になっていました。
受験を控えた夏。
私は熱を出しました。
ねぶたへは、
行けませんでした。
じいちゃんから電話がありました。
「行きたかった。」
「やんねぁーどいげねぁーんだって。」
そして、
「けっぱれ。」
電話は切れました。
冬。
じいちゃんが亡くなりました。
受験と重なり、
青森へは行けませんでした。
受験の日、
鞄には、
あの鈴をつけていきました。

翌年の夏。
また青森へ帰りました。
明日は、
じいちゃんの墓参りです。
「お墓、東京に移すことにしたから。」
母が言いました。
青森のお墓をしまい、
東京の合祀墓へ移すそうです。
夜。
ねぶたへ行きました。
じいちゃんと寄った店の前を、
通りました。
中から、
楽しそうな声が聞こえます。
「高校、受かったんだって?」
親戚のおばさんでした。
「うん。」
「おめでとう。」
「ありがとう。」
手には、
鈴を一つ、
握っていました。
太鼓が鳴ります。
笛が響きます。
ねぶたが、
目の前を通っていきます。
「ラッセラー!」
声が上がります。
「ラッセラー!」
私も、
声を出しました。
「ラッセラー!」
追伸
じいちゃんのお墓は、
東京へやってきます。
じいちゃん。
たまには行くからね。

