【その三十五】ねぶたの鈴

東京から青森へ帰るのが、

毎年の夏休みでした。

じいちゃんは、一人暮らし。

私たちが来ると、

「うるさくなったな。」

そう言いながら、

少し嬉しそうでした。

ここ二、三年、

ねぶたは、

じいちゃんと二人で行きました。

その前に寄るのが、

じいちゃんの行きつけの店。

「東京から来た孫だ。」

聞かれてもいないのに、

じいちゃんは私を紹介します。

少し恥ずかしかったけれど、

知らない大人たちの中にいるのが、

私は好きでした。

母には内緒です。

祭りの帰り。

人がまばらになった道を、

二人で歩きました。

「あった。」

鈴です。

「こっちにもあるぞ。」

鈴を探しながら帰るのも、

いつの間にか恒例になっていました。

受験を控えた夏。

私は熱を出しました。

ねぶたへは、

行けませんでした。

じいちゃんから電話がありました。

「行きたかった。」

「やんねぁーどいげねぁーんだって。」

そして、

「けっぱれ。」

電話は切れました。

冬。

じいちゃんが亡くなりました。

受験と重なり、


青森へは行けませんでした。

受験の日、

鞄には、


あの鈴をつけていきました。

翌年の夏。

また青森へ帰りました。

明日は、

じいちゃんの墓参りです。

「お墓、東京に移すことにしたから。」

母が言いました。

青森のお墓をしまい、

東京の合祀墓へ移すそうです。

夜。

ねぶたへ行きました。

じいちゃんと寄った店の前を、

通りました。

中から、

楽しそうな声が聞こえます。

「高校、受かったんだって?」

親戚のおばさんでした。

「うん。」

「おめでとう。」

「ありがとう。」

手には、

鈴を一つ、

握っていました。

太鼓が鳴ります。

笛が響きます。

ねぶたが、

目の前を通っていきます。

「ラッセラー!」

声が上がります。

「ラッセラー!」

私も、

声を出しました。

「ラッセラー!」

追伸

じいちゃんのお墓は、

東京へやってきます。

じいちゃん。

たまには行くからね。

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この物語は、「お墓じまい後の物語」のオリジナル作品です。

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