【その九】あの子が好きだった公園で。

あの子が好きだった公園で。

離婚してからというもの、私は一人で息子を育ててきました。

親の私が言うのもなんですが、本当に気の優しい子でした。

学校へ行く朝。

「いってらっしゃい。」

そう言って家の前で見送ると、

角を曲がる手前で、必ず振り返るのです。

私がまだそこに立っているかを確かめるように。

私も手を振り返します。

その姿が見えなくなるまで。

そんなことが、毎日の小さな幸せでした。

外で遊ぶことが大好きで、

泥だらけになって帰ってきては、

「お腹すいた。」

そう笑う顔が、今でも昨日のことのように思い出されます。

ここから先のことは、あまり詳しくはお話ししません。

ただ、

そんな息子も、私より先に旅立ってしまいました。

今でも仏壇には、一日三度手を合わせます。

あの子が好きだったものを、ほんの少しだけお供えして。

お墓参りにも欠かさず通っています。

それが、今の私の日常です。

でも最近、少しだけ思うようになりました。

私も年を重ね、

昔ほど元気ではなくなりました。

そして、私がいなくなったあと、

あの子のお墓が、誰にも手を合わせてもらえなくなることだけは避けたい。

そんな思いが、日に日に大きくなっていったのです。

その頃、樹木葬という供養を知りました。

私はすぐに決めたわけではありません。

まずは粉骨だけをお願いしました。

今は、あの子は私のそばにいます。

そして、私の役目が終わるその日には、

二人一緒に、丘のある公園の樹木葬で眠ろうと決めています。

子どもたちの笑い声が聞こえ、

風が木々を揺らし、

春には花が咲く。

そんなにぎやかな公園なら、

きっと、あの子も寂しくないでしょう。

角を曲がるたび、

振り返って私を探していたあの子へ。

今度は私が、

あなたのいる場所へ歩いていきます。

きっとまた、

「お母さん。」

そう呼んでくれるような気がしています。

ご家族の供養物語を読んでみる方は

___________________________________

この物語は、「お墓じまい後の物語」のオリジナル作品です。

文章・構成・イラストの無断転載、複製、生成AIへの再利用、改変、再配布はご遠慮ください。