【その二】 一本のりんごの木と、これからの時間。

一本のりんごの木と、これからの時間。

定年を迎えた私たち夫婦は、長年暮らした都会のマンションを売り、小さな庭のある田舎暮らしを始めました。

窓を開けると鳥の声が聞こえ、季節ごとに花が咲く。

そんな毎日を思い描いていたのですが、一つだけ気がかりなことがありました。

父のお墓です。

子どもたちに負担を残したくない。

そう考え、墓じまいをすることは決めていました。

でも、その後をどうするかだけは決められませんでした。

永代供養も考えました。

樹木葬も調べました。

けれど、「これだ」と思えるものには出会えませんでした。

そんな時に知ったのが、粉骨という方法でした。

「まずは、ご遺骨を大切に整え、ご家族でゆっくり考えていくこともできます。」

その言葉に、不思議と肩の力が抜けました。

急いで答えを出さなくてもいい。

そう思えたのです。

新しい家へ引っ越した春の日。

庭の真ん中に、小さなりんごの木を植えました。

毎朝、水をあげながら、

「今年は花が咲くかな。」

そんな会話をするのが日課になりました。

父のことを思い出すたび、

庭へ出て、木を眺める。

粉骨はしました、しかしまだ供養の形を完全に決めたわけではありません。

でも、それでいいと思っています。

私たちには、これからゆっくり考える時間があります。

そして、その時間もまた、父を想う大切な時間なのだと感じています。

ご家族の供養物語を読んでみる方は

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この物語は、「お墓じまい後の物語」のオリジナル作品です。

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