一本のりんごの木と、これからの時間。
定年を迎えた私たち夫婦は、長年暮らした都会のマンションを売り、小さな庭のある田舎暮らしを始めました。
窓を開けると鳥の声が聞こえ、季節ごとに花が咲く。
そんな毎日を思い描いていたのですが、一つだけ気がかりなことがありました。
父のお墓です。
子どもたちに負担を残したくない。
そう考え、墓じまいをすることは決めていました。
でも、その後をどうするかだけは決められませんでした。
永代供養も考えました。
樹木葬も調べました。

けれど、「これだ」と思えるものには出会えませんでした。
そんな時に知ったのが、粉骨という方法でした。
「まずは、ご遺骨を大切に整え、ご家族でゆっくり考えていくこともできます。」
その言葉に、不思議と肩の力が抜けました。
急いで答えを出さなくてもいい。
そう思えたのです。
新しい家へ引っ越した春の日。
庭の真ん中に、小さなりんごの木を植えました。
毎朝、水をあげながら、
「今年は花が咲くかな。」
そんな会話をするのが日課になりました。
父のことを思い出すたび、
庭へ出て、木を眺める。
粉骨はしました、しかしまだ供養の形を完全に決めたわけではありません。
でも、それでいいと思っています。
私たちには、これからゆっくり考える時間があります。
そして、その時間もまた、父を想う大切な時間なのだと感じています。
ご家族の供養物語を読んでみる方は
